そもそもファンドって何?
「ファンド」と聞くと、「会社を買収する」「巨額の資金を運用する」「運用にはリスクがある」「ベンチャー企業に投資する」などといったイメージを持つ人がいるようです。特に、日本ではファンド=ネガティブなものというイメージが先行しており、あまりよい印象ではないかもしれません。
確かに、これらのイメージは一概に間違いとは言えません。世の中のファンドにはこれらの側面を持つものも存在します。
ですが、一方で正解でもありません。
世の中のファンドには、買収をしないものもあれば、リスクの少ない運用をするものも、ベンチャー企業に投資しないものも存在します。
そもそもファンドには「基金」という意味があります。つまり、ファンドとは「お金を運用する組織」という意味しかありません。投資家から資金を募り、そのまとまった資金を運用する存在を「ファンド」と呼ぶのです。
そこには、ネガティブな要素や危険な要素は何もありません。まとまった資金を運用する組織はみな、ファンドなのです。
例えば、投資信託のことをファンドと呼ぶこともあります(厳密には、投資信託はファンドに投資するために発行される証券のことですが、ファンドそのものとほとんど変わらないと考えて差し支えありません)。
もちろん、アグレッシブでリスクの高い運用をするファンドや、敵対的買収をして社会に大きな影響を与えるファンドもありますが、そればかりではありません。国民年金基金もファンドですし、銀行にもファンドの側面はあります。
〇〇ファンド総ざらい
このように単に「ファンド」というだけではあまり大きな意味を持ちませんが、世の中には「〇〇ファンド」と呼ばれるファンドがたくさん存在します。その「〇〇」に入る言葉によって、ファンドは様々なタイプに分類されるのです。
ここでは代表的なものをいくつか解説していきたいと思います。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは、ファンドの中でも最もメジャーなものの一つかもしれません。単に「ファンド」と言った場合に、ヘッジファンドをさすことも珍しくありません。
ヘッジファンドとは、文字通り「(リスクを)ヘッジ」して運用するファンドのことをさします。リスクヘッジの手段としては、単に複数の銘柄に投資しポートフォリオを組むものもありますし、ロング(買い)ポジションとショート(売り)を組み合わせて騰落リスクに備えるものもあります。
先物取引のようなオプションを駆使して、時間軸によるリスクをヘッジするものもあるでしょう。
基本的に全てのファンドは、程度の違いはあれどリスクをヘッジしています。投資するものはファンドによって様々ですが、全てのファンドはヘッジファンドの要素を持っていると考えることもできます。
アクティブファンド
アクティブファンドは、ファンドならではの資金力を活かして、株主として企業に働きかけるファンドのことを指します(このときのファンドのことを「アクティビスト」とも言います)。
個人投資家では難しくとも、数十億、数百億円の資金があるファンドであれば、特定の企業の株を5%以上取得し、議決権を持って企業の経営に口を出すことも珍しくありません。
※株式の5%以上を取得すると、『大量保有報告書』の提出義務があります。
株主として、企業に働きかけ、経営の改善や改革に積極的なファンドをアクティブファンドと言います。
PEファンド
PEファンドの「PE」とはPrivate Equityのことで、未公開株式(非上場の企業の株式)に投資するファンドのことを指します。
非上場と聞くと、次に紹介するVCのことと混同してしまう人もいますが、VCは数あるPEファンドの一種にすぎません。
日本には、約200万以上の株式会社があると言われていますが、上場企業はわずか3,600社ほどであり、約99.8%以上の企業が非上場の株式なのです(大企業の子会社などもこれに当たります)。
PEファンドは、「(一般の投資家がなかなか手出しできない)市場に出回っていない株式に投資をする」ということのみを意味し、それ以外の点(投資する企業のジャンルなど)においては、ファンドごとに異なる特色を持ちます。
VC(ベンチャーキャピタル)
VC(ベンチャーキャピタル)はその名の通り、ベンチャー企業に投資するファンドのことです。ベンチャー企業は資金調達のために、投資家に株式の一部を渡します。ベンチャー企業のビジネスが成功し、大きな利益を得たり、上場するなどして株式に高い値がつくと、出資した投資家は大きな利益を得ることができます。
ベンチャー投資の場合、投資の利益が100倍になることも珍しくないようですが、ベンチャー企業が成功する割合は1%に満たないとも言われています。ビジネスや、世の中の先を見通す力でもない限りは、博打的な要素も強いファンドです。
また、VCの中には、投資という観点だけでなく、事業や会社を育ている目的で投資をするものも少なくありません。新しいサービスに可能性を感じていたり、その会社を応援する目的で投資するファンドもあるということを覚えておきましょう。
バイアウトファンド
バイアウトファンドとは、投資した(株式を取得した)会社の価値を高める働きをし、取得時よりも高い値段で株式を売却(バイアウト)することで利益を狙うファンドのことを指します。
積極的に経営に関与し、企業価値の向上に努めるという特徴があります。
一般に、上場企業の株式に投資する場合は、市場(マーケット)で手放すことになりますが、バイアウトファンドの場合、相対取引で、特定の企業に株(会社)を売却することもあります。もちろん、親会社などがある場合、その会社に買ってもらうこともあるでしょう。
再生ファンド
再生ファンドとは、衰退している企業に積極的に投資し、再生させることで価値を向上させ、利益を追求するファンドのことを指します。
自社だけでなく、周りを巻き込むことで資金を注入したり、経営を再建させるための人材やノウハウを有していることが多いです。
ファンドオブファンズ
ファンドオブファンズとは、ファンドの種類や性質ではなく、投資スキームのことを指します。一般にファンドは、マーケットや相対などで直接株や債券を取得し投資しますが、ファンドオブファンズは複数のファンドに投資することで間接的に市場に投資するファンドのことを指します。
日本で扱われている投資信託ではよくこの形式が採用されてます。
マザーファンド(ファミリーファンド形式)
マザーファンドとは、ベビーファンドと呼ばれる複数のファンドの資金をまとめて運用するファンドのことを指します。また、これらのファンドのグループやスキームのことをファミリーファンドとも呼びます。
先のファンドオブファンズと合わせて、日本の投資信託で多く採用されているスキームの一つです。
ファンドの側面は1つではない
このように単に「ファンド」といっても様々な種類があり、一概に評価できるものではありません。ここで紹介したファンドの種類も全体の一部にすぎず、また今後も新しい名前のファンドが生まれるかもしれません。
そして重要なのは、それぞれのファンドが、画一的な要素だけではなく、様々な側面を組み合わせて持っているということです。
VCの中には、単にお金だけを投資するものもあれば、経営に口を出し支援するものもあるでしょう。その時にそのファンドはアクティブファンドの側面も持ちますし、投資先が複数あれば(たくさんのベンチャー企業に出資していれば)、ヘッジファンドと捉えることもできます。
「ファンド」という言葉のイメージに左右されて、数少ない投資の選択肢をムダにしてはいけません。興味のあるファンドを見つけたら、そのファンドがそれぞれどんな運用をしているのか(〇〇ファンドの性質を持っているのか)を一つ一つ精査し、自分にあっているものを見つけ出すことが重要です。
先入観に左右されず、ぜひ様々な「ファンド」を確かめて、その本質を知るようにしてみてください。