株式投資は分析が命
投資と言えば、株。というほど、王道でありたくさんの人がチャレンジしているのが株式投資です。
個人投資家だけでなく、投資銀行やヘッジファンドなど、数多くの投資家が日々試行錯誤を繰り返しながら、調査し、分析し、研究し、悩み、考えながら売買を繰り返しています。
株式投資は、全ての投資の基本でありながら、決して簡単ではなく、たくさんの人が挑んでは失敗し損をして苦しんでいます。
株式投資は、儲かる銘柄を探し出してそれを売買することで利益を得るのが基本ですが、その「儲かる銘柄」を見いだすのは決して簡単ではなく、勘や流行りで選ぶわけにはいきません。
本当に良い銘柄を見いだすには、最低限の知識をもって、企業・株式を分析し、その銘柄が割安なのか割高なのか、今後事業が伸びるのか、経営は安定しているか、などを客観的に評価できるようになる必要があります。
ここでは、株式投資をはじめたいのであれば、絶対に押さえておかなければいけない、必要最低限とも言えるいくつかの資料(財務諸表)や指標について解説していきます。
株式投資で知っておくべき3大財務諸表
財務諸表は数多くありますが、株式投資をするために企業を評価・分析するのであれば、以下の3つ
・貸借対照表(B/S)
・損益計算書(P/L)
・キャッシュフロー計算書(CF)
は必要最低限知っておかなければなりません。それぞれ順に見ていきましょう。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表とは、バランスシート(Balance Sheet, 通称B/S)とも呼ばれ、企業の資産や負債を表にしたものです。
シートの左側に「資産」を記し、右側に「負債」と「純資産」を記すことで、その企業の持つ資産がどのように構成され、また調達されているのかを確認することができます。
資産には「流動資産」にあたる「現金」や「手形」「売掛け金」のように、比較的簡単に(短期に)現金化できる資産や、「固定資産」にあたる「不動産」や設備などの「機械」があります。
負債にも流動負債と固定負債があり、固定資産/負債の割合が高い企業であれば、B/Sが大きく変化する可能性が小さいことや、流動負債に対して、流動資産の割合(流動比率)が小さい場合、支払い能力に不安が残ることになります。
また、総資産における純資産の割合(自己資本比率)なども重要なチェックポイントです。
損益計算書(P/L)
損益計算書は、P/L(Profit & Loss statement)とも言われ、会社の売上やコスト、利益などを確認することができます。
売上と一口にいっていますが、損益計算書を細かく確認すると、「売上」「営業外収益」「特別収益」など、細かく分かれていることがわかります。
また、コストについても、一般的な原材料費などにあたる売上原価だけでなく、人件費やオフィスの賃料などといった、事業運営・企業経営に関わる「販管費(販売費及び一般管理費)」、会社が正しくあるための税金など、内容は細かく分かれています。
よく「売上が順調」「利益率が高い」「コスト削減」など、P/Lに関するような議論を耳にしますが、それが一体何を指し示しているのか詳しく紐解かなければ、効率的な事業運営や、企業の健全性を正しく測ることはできません。
その会社の事業が上手くいっているのかを理解するためにも、P/Lを分析することは順調です。
キャッシュフロー計算書(CF)
キャッシュフロー計算書(Cash Flow statement)は、企業のキャッシュフロー、つまり現金の流れを確認するための資料になります。
仮にB/Sで資産があるとなっていても、P/Lで利益が出ていることが確認できたとしても、結果として、会社に資金がなければ、支払い能力がなくなってしまっていては、経営は立ち行かなくなってしまいます。
また、急な支払いなどのリスクに対応するためにも、ある程度の現金を確保しておくことは重要です。
P/L上では利益が出ていても、手元の現金がなければ「黒字倒産」もあり得るのです。
一方で、計画性もなく、不要な現金を貯め込むことは、せっかく調達した資金を上手く活用できていないことの表れでもあり、計画性や、設備投資といった成長への準備が上手くいっていないのかもしれません。
一般家庭と同じように、日々の資金繰り(=キャッシュフロー)は重要です。財務の健全性を正確に把握し、企業の状態を正確に捉える努力が求められます。
株式投資で知っておくべき3大重要指標
株式投資においては、企業・事業の状態を把握するための財務諸表だけでなく、株価の妥当性を評価するための指標や、経営効率性を評価するための指標もしっかりと理解しなければなりません。
ここでは、
・PER(株価収益率)
・PBR(株価純資産倍率)
・ROE(自己資本利益率)
の3つを見ていきましょう。
PER(株価収益率)
PER(Price Earnings Ratio, 株価収益率)は、1株あたりの当期純利益を示しています。
PERは、「株価 ÷ 1株あたりの当期純利益」で算出され、利益に対して株価が高すぎるとPERの値は高くなり、株価が下がるか利益が大きくなるとPERの値は小さくなります。
一般にPERが高いとその銘柄は割高で、PERが低いと割安となります。
PERはそれ自体の数字だけでは一概に評価することが難しいですが、その会社の過去のPERからの推移や、他社や相場の平均値との比較で判断することができます。
日本企業のPERは平均して約12倍ですが、世界全体や先進国では16~17倍、アジア諸国やBRICsで12倍程度なので、世界と比較しても、比較的割安であると言えます。
PBR(株価純資産倍率)
PBR(Price Book-value Ratio, 株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産を示します。
PBRは、「株価 ÷ 1株あたりの純資産」で算出され、PER同様、株価が上がればPBRの値は大きくなり割高となり、反対に純資産が増えたり、株価が下がればPBRは小さくなり割安となります。
PBRは、その会社の解散した場合に株主に還元される割合を示しているため「解散価値」とも言われます。
例えば、PBRが1を下回るような株価の場合(時価総額90億円、純資産100億円>>PBR=0.9)、その会社を90億円でまるまる買って解散させた場合、100億円の現金を手元に残すことができる試算になるため、非常に割安な株は、値崩れのリスクも低く、安全性が高いと言われています。
日本企業のPBRは平均して約1.2倍ですが、世界全体や先進国では2倍強、BRICsで1.7倍程度なので、世界と比較しても、比較的割安であると言えます。
ROE(自己資本利益率)
ROE(Return On Equity, 自己資本利益率)は、自己資本における利益の割合を示しており、「純利益 ÷ 自己資本」で算出されます。
ROEの高い企業は、少ない自己資本で多くの利益をあげているということになるため、利益率の高い事業を営んでいるか、コストを抑えた効率的な経営をしているか、あるいは効果的な借入をすることで、計画的に事業を拡大させているなどといったことが考えられます。
ROEは高ければ高いほど良いというものでもありませんが、経済産業省では「8%」を目安としており、ROEが低すぎる企業については、積極的な株主への利益還元(配当によって自己資本を減らす)や、より効率的な経営を求めています。
ROEが10%~20%のような企業は、かなり効率的な経営をしている優良企業であるとも言われています。
ちなみに日本企業のROEは5~8%と言われ低水準なのに対し、世界的な大企業の多くは10~15%程度です。
この点だけを見ても、日本企業にはまだまだ経営改善の余地や、借入などによる利益拡大の余地、そして、不要な自己資本を株主へ還元する余力を残していることがわかります。
株式投資で成功するためには
ここで紹介したような指標は、あくまでも株式投資における超基本であり、これらを理解することでやっとスタートラインに立ったと言ってもよいでしょう。
また、これらの数字を理解したからといって、いきなり資産運用ができるわけではありません。
PERやPBRの数字は、目安にすぎず、自分自身でいろいろと考え、判断し売買をしていかなければいけません。
そもそもこれらの指標の算出元となっているB/SやP/Lの内容ですが、不動産や設備の価値については、そこに記載されている数字が本当に妥当なのか見極めることも求められます。
株式投資は、株価やその会社の評価や分析が非常に重要になります。決して簡単ではないですが、少しずつ知識を蓄えながら、勉強と実践を繰り返し実力を高めていきましょう。