ZOZOがヤフーに買収
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」などの運営などで知られる、株式会社ZOZOが、ソフトバンクグループの傘下であり、Yahoo! JAPANの運営などで知られるヤフー株式会社に買収され、子会社になることが2019年9月12日の午前8時頃に発表されました。
また、合わせて、創業者であり代表を務める前澤友作氏の退任も発表されています。
先ほど適時開示しましたが、ヤフーさんとZOZOは資本業務提携することとなりました。また、このタイミングで僕は代表取締役を辞任し、新社長に今後のZOZOを託し、僕自身は新たな道へ進みます。詳しくは本日17:30からの記者会見でお話しさせてください。
— 前澤友作@MZDAO (@yousuck2020) September 11, 2019
ZOZOは、前澤社長の行動や発言が以前から何かと注目を集めており、ZOZOTOWNも一般消費者に近いサービスで身近な存在だったため、大きな注目を集めています(女優さんとの交際や宇宙旅行なども世間の関心の的でしたね)。
買収は、TOB(株式公開買い付け)によって実施され、ヤフーは2620円で市場から株式の過半数(50.1%)の取得を目指して買い付けをすると発表されています。
ZOZOの発行株式は、約3億株であり、過半数の1.5億株を取得するには、約4,000億円が見込まれるため、買収の規模も非常に大きなものになります。
現代表の前澤社長は、ZOZOの株式の35% 以上を保有しており、仮に保有している全株をヤフーが買い取れば3,000億円近くにもなります。前澤社長の成功ストーリーにも注目です。
詳しくは、同日の夕方17:30から予定されている記者会見で語られる予定です。
TOBの発表で株価は高騰
ヤフーに買収される(TOBが実施される)ことが発表され、ZOZOの株価は大きく高騰しています。TOBの発表から約1分で90万株もの買い注文が入るほど、投資家の人気を集めたのです。
1分で90万株の買いが…!! pic.twitter.com/JaZEP2sRIS
— インヴェスドクター (@Invesdoctor) September 11, 2019
結果として、発表前日(11日)の終値の2166円から大きく株価を上げて、12日の始値で2566円(+400円, +18.5%)にもなっています。
その後、日中は少し株価が動いていますが、2400円代後半〜2500円前後を推移しており、前日までと比較して大きく株価が上がっていることは間違いありません。
ちなみにですが、買収”する”側として発表されたヤフーの株価も合わせて上昇しています。前日(11日)終値の297円から、12日の始値は310円(+13円, +4%)となり、一時314円にまで値上がりしています。
なぜ、株価が上がったのか
このように両社の株価が高騰した理由には何があるのでしょうか。
理由の一つとして大きいのはやはりTOBの買い付け価格でしょう。11日終値の株価が2166円だったのに対し、ヤフーが発表したTOB価格は2620円(+454円, +21%)です。
つまり、前日までに株を買っていた人は、TOBまで株を保有していれば20%の収益がかなりの高確率で見込めるのです。
そのため、TOBに向けてZOZOの株を保有したい投資家が殺到し、株価が大きく跳ね上がりました。結果として12日始値で2500円以上になっているため、20%ものパフォーマンスが期待できる投資家はかなり少なくなってしまったとは思いますが。
それでも、現在の市場株価(2400~2500円)は、TOB価格よりもだいぶ低いため、まだ買いが集中することが予測されます。
ただし、ギリギリまで安値で株を取得したい投資家も少なくないため、様子を見ながら細かい牽制が続いています。それによって小さく株価は変動しています。
もちろん、この利益は確約されているものではありません。TOBに対し、十分な応募が集まらなければ買収そのものがなくなる可能性もあり、その時は株価は大きく下がるかもしれません。
そうなれば、慌てて2400~2500円で株を取得した投資家たちは大損することになるでしょう。
一方で、買収そのものの経済的な価値に着目して”買い”が殺到(=株価が高騰)しているとも考えられます。
ZOZOは、ZOZOTOWNの運営などを行なっていますが、昨年は売上こそ拡大しているものの、初めて減益を記録するなど、今後の成長に対して懐疑的であったり不安視する投資家も少なくありませんでした。
そこにヤフーとの提携が加われば、今後さらに大きく成長する可能性が生まれます。ヤフーの傘下に入ることで、ZOZOという会社の今後の成長への期待が高まったのです。
また、ヤフーについても、近年Amazonや楽天に遅れをとっていたECサイト(ネット通販)のサービス強化において、ZOZOを買収しECサイト運営のノウハウを獲得することは大きな強みとなることが見込まれます。
それによって、ヤフーの株価も上昇したのだと考えられます。
株価高騰の理由の前者「TOB価格との差分を見据えた買い付け」は、いわゆるテクニカル寄りの考え方なのに対し、「企業の本質的な価値や業績の成長を見据えた買い付け」はファンダメンタルズ寄りの考え方ですね。
ちなみに、今回のTOB価格(2620円)は、ヤフーが4,000億円を投じてもZOZOを取得することで、それ以上の利益を得られると算出したからに他なりません。
これはもちろん、事業内容に相乗効果があるヤフーならではの算出になるでしょうが、それでもZOZOの価値をきちんと見出し、前もって(11日以前に、2,000円程度の株価で)ZOZOの株を保有していた投資家にとっては大きく利益を得るチャンスとなりました。
株価を考えるときには、表面的・短期的なテクニカル分析の視点だけでなく、本質的で中長期の視点が必要になるファンダメンタルズ分析の視点も重要であることがわかります。