資産運用のハードルを下げるNISA
NISAとは「少額投資非課税制度」のことであり、簡単に言ってしまえば、株式投資の利益について通常かかる税金20%を支払わなくてよくなる制度のことです。
非課税になる枠には「年間120万円」「5年間」などの制限がありますが、「貯蓄から投資へ」という政府の思惑を反映し、「課税しないので、皆さん投資を始めてみましょう」というメッセージを読み取ることができます。
実際、NISAが始まった2014年以降、個人の投資(資産運用)を始める割合は増加しているようで、ジュニアNISAなど、関連制度も拡大に向かっており概ね成功しているように思います。
たしかに、投資で得た利益に税金がかからないというのは、個人投資家にとって非常に魅力的であり、また収益に直結することからも、お得な制度のように感じます。
限度枠は120万円と限られていますが、元々資産運用をしていた方も、「株式の一部をNISAに移行しようか」などと考えるかもしれません。
一見するといいことずくめのNISAですが、実はこの裏に個人投資家にとってデメリット(不利益)となる制約も設けられています。
「知らずに運用して、後々損をした!」
などとならないように、ここではNISAの「デメリット」についても紹介していきたいと思います。
NISAでは損益通算ができない
NISA最大のデメリットといえば、「損益通算ができない」ことでしょう。
通常、A口座で10万円の利益、B口座で2万円の損失となった場合、10万円に対する20%の2万円が課税されるのではなく、2つの口座を通算してた8万円(10万円−2万円)の利益に対する1万6,000円が課税されます。
これを「損益通算」と呼ぶのですが、NISAではこれができません。
つまり、資産の一部をNISAで運用してそれがマイナスとなった場合には、全てを通常の口座で運用していたときよりも多くの税金を納めなければならなくなってしまうのです。
これには十分注意しなければいけません。
「私はNISAだけで運用しているから関係ない」と高を括っている人も注意が必要です。
これはNISAだけで運用している人にも適用されるケースがあります。
例えば、NISAで100万円分購入した株式が、70万円まで値下がりしたとします。
損益通算もできずそのまま保有して、NISAの満了期間である5年を向かえて、そのまま課税口座へ株式を移管してしまうと、なんとそのタイミングで70万円(30万円の損失)で「損失確定」してしまうのです。
そのため、その後株価が値を“戻して”100万円になったときに、30万円の利益に対して課税されてしまいます。
100万円で手にいれた株式が、一度値を下げて戻しただけなのに、課税が発生してしまうということになります。
これは通常の取引では発生しない納税です。こういったケースにも注意が必要になります。
出典:5年間非課税のNISA、メリットばかり強調されるけどデメリットも… | 工学博士と学ぶ NISAの現実と長期投資の実践
ニーサ比較.jp/nisa/nisaニーサのメリットばかり強調されるけど.html
制度を活用するなら細かく確認する
ここでは「損益通算ができない」といった制約とそこから生まれるデメリット(不利益)について、詳しく解説してきましたが、他にも
・新規購入枠にしか使えないため回転売買がほとんどできない
・特定口座に移管した株式を戻すことができない
・口座開設に時間がかかる
などといったこともデメリットとして挙げられます。
NISAに関していえば、現状の制度を細かく把握するだけでなく、「制度変更」も常に確認できるようにしなければなりません。
ちなみに、2014年の制度制定以降、ほぼ毎年制度が更新されています。
金融の世界では、日々細かくルールの改訂が行われています。
そして、そのルールをきちんと把握できないと、損をしてしまうケースは往々にして存在します。
無知が故に損をすることのないように、常日頃から勉強や情報収集は続けていきたいものです。