イギリスで営業マンがAIに置き換わる
イギリスの大手金融機関、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは、2016年3月に、220人の投資アドバイザーをロボ・アドバイザーと交代するという発表を行いました。
これは、金融業界としては非常に大きなニュースだったと思います。
簡単に説明すると、これまで対面で顧客の話を聞いてきた営業マン(人)を、AIに置き換えるということです。
人工知能が人間の仕事を奪うとここ数年よく耳にしますが、これの典型的な例だと言えるでしょう。
AIは人間の代わりは勤まるのか
さて、このニュースを受けて金融関係者からは様々な意見が飛び出しました。
証券会社の職員や銀行職員、つまり仕事を”奪われる”側に多かった意見は、「大切な資産運用を人工知能に任せるなんておかしい」というようなものだったと思います。
「人工知能にそんなことは出来ない」
「人間にしか出来ないような柔軟な提案がある」
危機感を感じた金融関係者はこのように口にしました。
外資系金融期間に勤め、個人としても資産運用のアドバイス業務を行っている私の意見は、実は彼らと真逆です。ロボ・アドバイザーの台頭は顧客(投資家)にとって非常に価値があるものだと思います。
なぜこのように考えるのかというと、これまで証券会社や銀行の窓口担当者が顧客に対して提供してきたサービスの価値が”低過ぎる”ためです。
これは恐らく金融の世界にいる人間であれば、誰しも感じていたことだと思います。
証券会社の営業マンがやっていることは「投資信託を顧客に売る」という、ただそれだけです。
証券会社は仲介手数料で儲けているため「その後の顧客の資産の変動」など関係なく、ただ投資信託をたくさん買ってもらうことを目的としています。
一言目には「お客様のために」と言っている証券会社の営業マンですが、あんなものはただの営業トークであり、結局は商品(投資信託)をたくさん買ってもらいたいだけです。
たくさん買ってもらえれば、担当者の給料も増えます。その後、売った商品の価格が上がろうが下がろうが彼ら(販売員)にとっては実質何の影響もありません。
そういった世界で成果を残そうと必死な営業マンは、顧客に対して口八丁で商品を売りつける技術を磨く一方で、決して「金融に対する深い洞察力」を備えている訳ではありません。
投資信託を販売する現場における営業トークの意味のなさ。これは深刻な問題だと思います。そのことについては以下の記事でより詳しく解説しているので、是非ご一読ください。
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AIによって真に価値のあるサービスが見直される
こういった知識の浅い、真に顧客の為になっているわけではない営業員が、ロボ・アドバイザーに取って代わられるのは然るべき流れですし、この「代替圧力」が出現することは、証券会社や銀行員のあり方を見直す良いきっかけになるのではないかと思います。
現状、私の知る限りでは、真に顧客の為になる金融の話をし、実際に顧客と同じ目線に立った資産運用商品を提供しているのは、ヘッジファンドのように「自分自身の資金を、商品に突っ込んでいる」人たちのみだと思っています。
私がサイトを通じてヘッジファンドの紹介や研究をしている理由はそこにあります。
ファンドスタッフの説明は、証券会社の担当者がする説明とはワケが違います。
実際に、ファンドの価格が下がれば、営業員も実損を被るわけですし、説明にもリアリティと迫力があります。
ロボ・アドバイザーの出現は、こういった「無数の証券会社営業マンに埋もれてしまってきた”本当のプロフェッショナルなアドバイザーたち”が見直される良い機会になるのではないか」と考えています。
顧客に対し低い価値を提供していた従来型サービスを駆逐していく、ロボ・アドバイザー(AI)。
今後も、その動向から目が離せません。