投資系の情報雑誌を見ると、「100万円が3年で1億円に!」というようなキャッチーなタイトルのもので溢れかえっていますし、テレビなどでも「1日30分で月収300万円を達成する」といったような株式の短期売買を勧める内容のものをよく目にします。
こういった「短い期間(時間)で稼ぎを得よう」とするものの多くは、チャート分析を根拠に売買をするテクニカル分析を主としているものが大半です。
「短期売買で利益を得る」ということには人を惹きつける魅力と言うか、魔力とも呼べるような何かがあります。
誰でも短期間でお金が何倍にもなったらうれしいですよね。
雑誌などのメディアは、多くの人の関心を集める必要があるため、興味を惹きつけやすい短期売買の記事ばかりを扱うのでしょう。
しかし、金融に関わる仕事をしているプロのファンドマネージャーや機関投資家の中では、テクニカル分析は実はあまり重んじられていません。
テクニカル分析を主体とした投資は、資産を増やす方法としては適切ではないのです。
もちろん、デイトレ(デイトレード)で資産を増やしたという人もいますが、そういった方は「運の良い」ごく一部の人たちです。言うなれば、デイトレはギャンブルに過ぎません。
今回は、デイトレード(テクニカル分析)が資産運用に適していない理由について解説していきたいと思います。
なぜデイトレが普及したか
そもそも、なぜデイトレは普及したのでしょうか?
その背景には「規制緩和」や「技術の進歩」などが考えられます。
1. 規制緩和
以前は、証券会社に支払う売買仲介手数料が固定されていましたが、規制緩和と共に自由化されました。
ネット証券も誕生し、手数料がどんどん安くなることで、1日に何回も取引することが可能になりました。
これによって、今までは難しかった細かい取引を繰り返す手法がより簡単に実現できるようになりました。
2. 技術の進歩
また、取引自体もパソコンの前でクリックするだけよくなり、売買手続きも容易になりました。
さらに、様々なテクニカル分析の指標を個人でも簡単に使えるツールも発達し、取引量は増加していきました。
情報という側面においても、インターネットの普及により、かつては金融機関のプロに優先的に集まっていた情報が、個人投資家でも素早く手に入れられるようになっています。
このように情報格差がなくなってきたことも、デイトレ普及の一因と言えます。
そして、デイトレが普及したことで、ある期間で見るとお金を増やしているという人も増えてきました。
資産が長期的に見て本当に増えたのかは定かではありませんが、一時的にでも増えていればメディアは取り上げます。
上手くいけば儲かる方法として世の中に認知されたことで、一気に広まったのだと考えら得ます。
デイトレが勝てない理由
デイトレは一時ブームにはなりましたが、長期的に見て勝ち続けるのは不可能に近いものがあります。
デイトレで売買の根拠に用いるのはチャート分析です。
この分析手法には、様々なものがありますが、有名なのは「ゴールデンクロス(短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から交差する)」などでしょうか。
あるチャートの形について言及し、必勝パターンを主張する人は山のようにいますし、そのパターンも星の数ほどあります。
これらに共通しているのは、「過去の値動きの結果をもとに、未来の値動きを予測する」ということです。
しかし、これは全くナンセンスな投資手法です。
株価の動きは「ランダム・ウォーク」と言われています。
過去の値動きをもとに、将来を予測できる合理的な理由はありません。
「株価の動きに法則性があるのか?」
この問いに対して様々な経済学者がこれまで研究を重ねてきました。
その結果、株価は効率的な市場においては、短期的にはランダムに動くということが確かめられています。
効率的な市場とは、株価形成に影響を及ぼす情報が瞬時に広まり、情報格差がないような市場を指します。
この効率的市場においては、株価の短期的な動きは「ランダム・ウォーク」や「ブラウン運動」などと表されます。
ブラウン運動とは、水中の粒子などが全く不規則に動くことを指します。ブラウンが水中に浮かんだ花粉の粒子を観察することで見つけたと言われています。
こういった動きを予測しようとすることは無意味で不可能なのです。
世の中には、数多くのテクニカル分析の手法が存在しますが、そのどれもがきちんとした根拠に基づいているものではなく、なんとなく・それっぽく理論づけられているかのように語られているものです。
もちろん、デイトレで資産を築いたという人も存在しますが、たまたま運が良かっただけだと言わざるを得ません。
市場への参加者が多ければ、たまたまで勝ちを拾う人もある程度は出てきます。世の中には宝くじに当たる人もいますし、ギャンブルに勝つ人もいます。
ですが、しっかりと安定して資産運用を運用したい(資産形成したい)人にデイトレードをするようなテクニカル分析は決しておすすめできません。
世の中に溢れる雑誌などの記事には、確固たる根拠が無いものも少なくありません。甘い言葉、ヒキの強い見出しに踊らされることなく、賢明な判断を心がけましょう。