サラリーマンは、投資の専門家ではないため運用に充てられる時間や資金に限りがあります。
また、投資を生業にしている人たちと比較して、知識・経験の面で遅れをとってしまうこともある程度は仕方のないことです。
ですが、「サラリーマンだからこそ」の利点を活かした運用のテクニックもあります。
そこで、今回はサラリーマンならではの投資のコツと、うっかり陥ってしまいがちなトラブルについて注意しておきたいポイントを解説していきたいと思います。
サラリーマンの投資は長期運用が基本
サラリーマンの投資は、基本的に中長期での運用が大前提となってくるでしょう。
相場の流れを読んで、売買を繰り返すのではなく、じっくりと吟味して銘柄を選定し、一度買ったらその後数ヶ月〜数年以上放置して値上がりを待つといったようなスタンスが適しています。
これは、サラリーマンの特性上、日中に短期の売買をできないことが理由です。
チャートを分析し、1分、1秒の単位で戦っている本職トレーダーと、この短期売買の戦場で戦ってしまうと、反応が遅い分大きく負け越す可能性が高くなります。
「ここだ!」といったタイミングを掴めないのは致命的です。
また、サラリーマンである以上、日中は自分の仕事に集中する必要があります。
自分の持っている商品の値動きがどうなっているのかを常に気にしていたら、仕事どころではなくなってしまいますね。
じっくりと調査・分析し、一度購入したらあとは1週間や1ヶ月に一度、時々値動きを確認する程度に留める。
そして半年や1年といったタイミングで売買の判断をする。
企業の価値を正確に見極める力が問われますが、中長期での運用こそがより確実に利益を得るポイントになります。
サラリーマンならではの強み!本職と関連する会社や国に投資するメリット
中長期で安定した運用をするためには、企業の価値をしっかりと見極める目が重要になってくるとお伝えしましたが、ここで「サラリーマンならではの強み」を活かすことができます。
サラリーマンは、自分の会社やその周辺の事情に誰よりも精通している、いわゆる「業界のプロ」です。
そのプロの知見を活かして、自社や関連企業など、本職に関連する業界の株を選ぶとよいと思います。
よく知っている企業や業界のことであれば、中長期的に収益が期待できる企業を見つけ出すことはそこまで難しくないかもしれません。
周りの投資家が、決算資料を読んだりニュースを見ているだけではたどり着けないような、より深い情報を駆使した分析・評価を行うことができます。
また、商社に勤務している人などは、ビジネスを担当する国や地域に着目してもいいでしょう。
実際に現地に赴いたからこそわかる、本場の情報を知った上で投資先を選ぶことは周りにはマネできないサラリーマンならではの特権でしょう。
自分の得意分野で戦うのは、勝負事において鉄則です。
ある商社勤務のサラリーマンは、自身の担当がマレーシアだったため、マレーシア国内で伸びるであろう産業にある程度の目星が立っていました。
そのサラリーマンならではのノウハウを活かし、「これは来る!」と思ったマレーシアの特定の産業の株を買い続けることで、なんと5年間で+50%近く(年+8~9%)の利回りを出していたのです。
この例こそがサラリーマン投資の代表的な成功例と言えるでしょう。
本業と関連する会社や国に投資する際に気をつけなければならないこととは
さて、自分自身が仕事で関わっている企業や国に投資することが、サラリーマンが投資で勝つ鉄則だとお伝えしましたが、この戦略には「あるリスク」が伴います。
それはインサイダー取引です。
インサイダー取引とは、「まだ公になっていない、その会社の株価に影響を与える重要事実を知った状態で、その会社の株を売買すること」であり、これは金融商品取引法によって禁止されています。
この「重要事実」というのは、「買収」や「業務提携」「新製品の情報」「主要株主の異動」など多岐に渡ります。 参考:重要事実一覧表 http://www.jpx.co.jp/learning/tour/books-brochures/tvdivq0000003rx6-att/jy_stock.pdf
近年では、野村証券の社員やNHK社員などがこのインサイダー取引を犯し、ニュースなどでも大きく取り上げられましたが、実はインサイダー取引は誰でも犯しうる犯罪なのです。
サラリーマンの場合は特に注意が必要です。
社内では当たり前のことであったとしても、その情報が外に出ていない状態で株の売買をしてしまうと、インサイダー取引に該当する可能性があります。
ちなみに、インサイダー取引の罰則は、5年以下の懲役、または500万円以下の罰金です。
危ないと思われる情報を持っているときは、絶対に法律を犯さないよう細心の注意を払いましょう。
一般の投資家に残された2つの選択肢
自身の専門としている領域で強みを活かしつつも、インサイダー取引にならないように一定の線を引いた投資をするというのは、実はそこまで簡単なことではありません。
特に、インサイダー取引は、犯してしまうと一発でアウトなため、慎重になりすぎるくらいの注意が必要です。
そうなってくると、もうほとんど投資の選択肢はありません。
長期投資をしようにも、あまり詳しくもない企業・業界を限られた時間で分析しなければならず、良い銘柄はなかなか見つけられないかもしれません。
こうなってしまった場合、一般の投資家が取れる選択肢は大きく2つに絞られます。
それは「ETF」と「ヘッジファンド」です。
運用資金が1,000万円未満なら手数料の安いETF
世界で最も成功した投資家の一人であるウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett)は、一般人がどのような金融商品を持つべきかという質問に対して、「手数料が安くマクロ経済にかけるようなETFを保有して長期間放置するべき」と答えています。
彼の言い分は、「結局、一般人が購入できるような数十万〜数百万円規模の投資商品では、質に限界がある」というものです。
質の高い金融商品にアクセスできない以上、「経済が徐々にでも成長していくことに賭けて、とにかく手数料の安いETFを買ってそれを放置しておくこと」こそが、一般の投資家にとって最も期待値の高い投資方法なのだと主張しています。
実際に日本に存在する投資信託の9割は、日経平均の推移に勝てていないという結果も出ており、投資の神様と言われているバフェットだからこそ辿り着いた、一つの真理でしょう。
運用資金が1,000万円以上あるなら富裕層向けの資産運用サービス
一般にはETFを長期で保有することがオススメと書きましたが、運用資金が1,000万円以上あり、まとまった金額を動かせるというのであれば、話は変わってきます。
実際、バフェットも「資産が少ないのであればETFを買うしかないが、まとまった資金があればそのメリットを活かすべきだ」と説いています。
金融の世界には、富裕層のみを相手にした資産運用の専門サービスであるヘッジファンドが存在します。
プロのトレーダーが大きな資金を運用するヘッジファンドでは、市場の成長以上の利回りを出す場合が往々にしてあります。
実際、ウォーレン・バフェットが会長兼CEOを務めるバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway Inc.)は20年近くに渡って市場の成長を大きく上回る実績を残しており、彼のファンドに古くから預けている人は億万長者になっています。
そういった、優れたファンドに預け入れる事ができれば、それに超した事はありません。
ヘッジファンド、一般にローン等の借入額を引いた純粋な金融資産が1億円以上あるような富裕層を対象としており、なかなか手が届くものはありませんが、運用資金が1,000万円程度あれば出資可能な小規模〜中規模のものも存在しています。