ファンド選びは難しい
資産運用をする人が増えてくるのに合わせて「ファンド」と呼ばれるものも増えてきています。
ファンドには、銀行や証券会社で取り扱われている、いわゆる「公募」の投資信託(通称:投信)と、「私募」であり、少数の選ばれた投資家から資金を調達するヘッジファンドがあります。
ヘッジファンドは、元々海外の富裕層向けのもので、数十人ほどの出資者を相手に、数億円単位の資金を調達するものでしたが、日本においてはもう少し一般的なもので、数百人単位の出資を募集し、最低金額も1,000万円程度に下がってきています。
もちろん、誰でも簡単に始められる投資信託などと比較すると、ハードルは高いですが、ある程度の稼ぎ・貯蓄がある人にとっては、手が出ないというものでもないでしょう。
しかし、投資信託もヘッジファンドも数が増えてきており、まさに玉石混交の状態です。
特に、投信の方は6,000種類近くある中で、金融庁が「優良」と認めたものが100本に満たないなど、その割合は非常に小さくなってしまっています。
資産運用の幅は広がりましたが、粗悪品も増えてきているため、きちんとした目で有力なものを正しく評価できなければ資産運用を続けていくことはできないでしょう。
そこで、今回はファンド選びのポイントを解説していきたいと思います。
特に「手数料」でファンドを選んでしまっているあなた!要注意ですよ。
手数料で選ぶのはNG
ファンド選びにおいて、多くの投資家が真っ先に気にするポイントが「手数料」です。
投資信託ランキングでも、上位にはノーロード(購入時手数料が無料)のものが名を連ねており、やはり手数料が安いものに人気が集まっていることがわかります。
「手数料は明確なので比較しやすい」
「不確かなリターンよりも確実にコストになる手数料を抑えることが重要」
などと言う人もいますが、手数料をファンド選びのポイントにするのはNGです。
手数料の安い投資信託を好んで選ぶのは、素人投資家が陥りやすい、典型的な失敗例と言えるでしょう。
以下の例を考えてみてください。
① 手数料5%、利回り15%
② 手数料1%、利回り5%
①は②の5倍の手数料がかかっていますが、利回りは3倍にしかなっていません。
しかし、実際に手元に返ってくるリターンは
① 手数料5%、利回り15% → 10%
② 手数料1%、利回り5% → 4%
と、2倍以上の差になっているのです。
このケースを見ただけでも、手数料だけを基準にファンドを選ぶことが以下に意味のないことかを理解いただけるかと思います。①と②を比較すれば、より手数料の高い①の方が優れていることは明らかです。
もちろん、手数料は最終的なリターンに影響を与えますが、それは運用の成果(利回り)とセットで考えるべきものです。
仮に、全く同じ成果が期待できるものがあるのであれば、その時は手数料が安い方を選ぶに越したことはありません。例えば、同じ投信を買うのであれば、より手数料の安いネット証券などを利用する方が良いでしょう。
しかし、ヘッジファンドのように個々が独立しているもの場合、簡単に手数料で比べてはいけません。特に、ヘッジファンドは、一般に手数料が高いと言われていますが、それ以上に運用での成果が大きいのです。
結果、出資者に還元されるリターンも大きくなります。
そもそも、手数料というのは、運用に対して支払われるものであり、そこが安い(低コスト)であるということは運用の質にも疑問が生まれます。
きちんと情報収集をし、時間をかけて分析をして、優秀なトレーダーが判断・意思決定する場合、それ相応の費用を求められ、彼らに報酬を払うことは真っ当な話です。
むしろ、極端に安い手数料のものは、「安かろう悪かろう」な運用になってしまっている危険性も孕んでいます。
確かに「手数料」はわかりやすく、また簡単に判断できるポイントですが、安易に流されないようにすることを忘れないようにしましょう。
おすすめファンド選びのポイントは
では、具体的にファンドを選ぶ際にはどのようなポイントを重視して考えると良いのでしょうか。
極端な話、出資者に還元される「リターン」に尽きるのですが、これに大きな影響を与えるのが、「運用の質」つまりはトレーダー(ファンドマネージャ)の投資の実力に他なりません。
ヘッジファンドなどは、ファンドごとに様々な運用手法・投資理念を掲げています。
もちろん、PEファンドのように、投資の手法”それ自体”が優れていることもありますが、
「日本の未来に投資する」
「優良企業を見出す」
などと、ふわっとしたポリシーはどんなファンドにも当てはまります。
成長する企業を見つけ出し投資するのは、全てのファンドに共通しているのです。
そこで重要なのは、結局は資産を預け、運用を一任する、トレーダー(ファンドマネージャ)の実力になります。
その人自身の、経歴や過去の実績ももちろん重要ですが、ここではさらにもう一点、運用の成果の「安定感」にも着目してみましょう。
仮に、5年で+50%(年平均10%)の成果を上げた2つのファンドがあったとしましょう。
ですが、乱高下を繰り返し(+30%の年もあれば、-20%の年もある)ているのと、毎年着実に安定して成果を積み重ねているのとでは、その本質は大きく異なります。
後者の「安定して着実に成果を積み重ねているファンド」の方が運用が優れているのは明らかです。
前者の場合は、また来年大きく下落した場合に、多大な損失を被るリスクがあります。そもそも、大きくプラスの成果が出た年も、まぐれだったのかもしれません。
また、長期で見ると、安定した運用をするファンドの方が、乱高下を繰り返すファンドよりも大きな成果を残すことも明らかです。
もし、過去の運用実績を確認できるのであれば、そのチャートが、
・なだらかな右肩上がり(安定した成果) なのか
・乱高下したギザギザ(不安定な成果) なのかを、
確認してみてください。
もう一つの重要なポイントが、日本市場に投資している場合に限りますが、日経平均との連動具合も重要な指標です。
特にここ数年は、株価も堅調に推移しているため、実は、多くのファンドでそれなりの成果が出ています。
ですが、そのパフォーマンスが、日経平均に大きく連動している場合、それはファンドが生み出した成果ではなく、ただ好景気に乗っかっただけに過ぎない可能性があります。
一方で、日経平均(相場)とあまり相関のないパフォーマンスをしているファンドであれば、その成果は、まさにそのファンド自体が残したものと言えるでしょう。
特に、株価が下がっている(下げ相場)のときに、その被害を最小限に止めているようであれば、優秀であることは間違いありません。
・運用実績(パフォーマンス)が安定していること
・パフォーマンスが相場(日経平均)に大きく左右されていないこと
この2つをファンド選びの際には、是非参考にしてみてください。
安易に、手数料の安い投信などを選択肢ないよう、金融のリテラシーを高めていきましょう。