リスクを勘違いしている人は多い
投資をしている人の多くは「低リスク」で運用したいと考えているようです。
確かに、大切な資産が減ることは避けなければいけませんし、なるべく損をしないように運用したいと考えることは決して間違いではないでしょう。
ですが、皆さんは「リスク」というものを正しく考えられているのでしょうか?
もっと言えば、ほとんどの個人投資家はリスクのことを間違って捉えてしまっています。
「損をしない=低リスク」と考えるのは間違いです。
ここでは、投資におけるリスクについてきちんと考えていきたいと思います。
投資における「リスク」とは
投資における「リスク」とはなんでしょう。
まずは、以下の3つのケースを考えてみてください。あるところに旅行するとしましょう。
① 確実に4時間で着く新幹線
② 道路が空いていれば2時間だが、渋滞があると5時間になる車のルート(渋滞する確率は50%)
③ 1時間で着くかもしれないが、万が一事故があると10時間かかる飛行機のルート(事故の確率は10%)
単純に期待値を計算すると
① 4時間×100% = 4時間
② 2時間×50% + 5時間×50% = 3.5時間
③ 1時間×90% + 10時間×10% = 2.9時間
となるので、③の飛行機のルートが最も効率的に思ます。
ですが、投資的な観点で考えると、最もリスクが少ないのは①の新幹線のルートです。
①のルートが、最も”確実に”目的地にたどり着くことができます。
仮に、あなたが「今日の夕方までに〇〇に着てください」と言われたときのことを考えてみてください。
絶対に遅刻が許されない商談ですが、約束の時間までは4時間しか残されていません。
飛行機であれば1時間で着くはずなので余裕がありますが、万が一トラブルに巻き込まれてしまうとたどり着くことができません。
車で行くことも可能ですが、万が一渋滞に巻き込まれるとギリギリになる可能性があります。
このようなケースでは、ほとんどの人が確実に①の新幹線を選ぶでしょう。早く着くこともありませんが、遅れるリスクもありません。
このように、不確実性の無い選択肢こそ、投資におけるリスクの考え方です。
では、次の例を考えてみてください。
① 絶対に事故を起こさないタクシー(10回中0回、事故率0%)
② ときどき事故を起こすタクシー(10回中5回、事故率50%)
③ しょっちゅう事故を起こすタクシー(10回中9回、事故率90%)
あくまでも例題なのでとんでもない数字になっていますが気にしないでください。笑
①②③の3つの中で最もリスクが小さいのはどれでしょうか。
当然のことながら、絶対に事故を起こさない①のタクシーが低リスクです。
では、次にリスクが少ないのはどれでしょう。
②と考えたあなたは要注意です。投資の観点で言えば、②よりも③の方が低リスクになります。
③はほぼ確実に事故を起こすため「乗らない」という判断を容易にすることができます。
繰り返しになりますが、投資においてリスクとは「不確実性」です。「危険度」ではありません。
この点をきちんと理解し覚えておくようにしましょう。
低リスクは本当に良いことなのか
投資における「リスク」についてきちんと理解いただけたでしょうか。
今まで闇雲に「低リスク」こそ重要だと思っていた人は、その考えがいかに危険だったかということにお気づきになったかと思います。
では、最後に投資の例で、どの選択肢が最も優れているのかを考えてみましょう。
① 10,000円が、確実に10,020円になる
② 10万円が、9万円〜12万円になる
③ 100万円が、80万円〜150万円になる
リスクが小さいのは成果が確実な①です。次いで、②→③とリスクは高くなっていきます。
しかし、それぞれの期待値は
① 10,020円(+0.2%)
② 10.5万円(+5%)
③ 115万円(+15%)
となっており、私個人であれば、まず間違いなく③に投資します。
投資においては、リスク以上にリターン(期待値)も重要なのです。
もちろん、万が一のケースは避けなければならないでしょうし、状況によって必要なリターンも異なってくるため、判断基準は人それぞれでしょう。
資産が100億円もある人は、今さら万が一のリスクをとって大きく設ける必要もないので、確実に+0.2%(+2,000万円)を選択するかもしれません。
また話が少し逸れますが、重要なのはリターンの利回りだけでもありません。
③ 100万円が、80万円〜150万円になる(期待値115万円, +15%)
④ 1,000万円が、800万円〜1,400万円になる(期待値1,100万円, +10%)
の例だと、③の方が利回りは大きいですが、リターンは15万円と100万円で④の方が大きくなります。
持っている資産を全て投資することができるのであれば利回りは重要ですが、その投資先にどれだけの資金を投じ、結果として得られるリターンの”大きさ”も重要なのです。
自分自身で1,000万円を株で運用するのは困難でも、ヘッジファンドなどを活用すれば大きな資産を運用に回せることもあります。
ちなみにここで挙げたそれぞれの例は
① 預金
② 投資信託
③ 株 ※かなり優秀なトレーダーです
④ ヘッジファンド
をイメージしています。
投資の世界において「リスク」は必ずしも悪いものではありません。また、利回り(効率)ばかりを追い求めて、肝心のリターン(大きさ)を蔑ろにしてもいけません。