投資の持つ意味とは
株や投資信託は始めやすいのか、不動産は儲かるのか、FXはリスキーか、ファンドはおすすめなのか、など、投資について論じられるときには、その投資の「手段」が「儲かるのかどうか」がポイントになりがちです。
確かに、大事な資産を運用するわけですから、儲かるのかどうか(利回りやパフォーマンス)に注目が集まるのは当然ですが、そもそも投資にはお金儲けだけではない意味があります。
株式投資を通じて、その会社の株を取得するということは、株主になるということであり、あなたはその会社のオーナーの一人になることに変わりありません。
株式会社は株主のモノです。決して経営者(社長)のモノではありません。
つまり、自分が資金投入して会社に投資するということは、その会社の事業やサービスに貢献(資金提供)するということであり、自分の手元のお金が増えた(儲かった)/減った(損をした)だけではない、意義や社会的な価値があります。
そこで、ここでは投資の持つ意義や社会的な価値に注目してみましょう。
特に注目度の高い「ESG投資」と「SDGs」という2つのキーワードについて詳しく掘り下げていきたいと思います。
ESG投資とは
ESG投資とは、
・Environment(環境)
・Social(社会性)
・Governance(企業統治)
の3つのキーワードの頭文字からきており、これらのポイントを投資先の企業選定の際に重視します。
ESG投資の市場は年々拡大しており、世界持続可能投資連合(GSIA)によると、2016年時点でESG投資の市場規模は、約2,755兆円(22.9兆ドル)にも達し、投資市場全体の4分の1以上にもなっているます。
特に欧米で加速しており、ヨーロッパでは全体の半数以上がESG投資になっています。
出展:ESG投資とは? | EV革命 | 大和証券
https://www.daiwa.jp/products/fund/201802_ev/esg.html
Environment(環境)を重視するというと、環境に配慮したビジネスやサービス(ソーラー発電のようなエネルギー事業や環境保護ビジネスなど)ばかりかと考えてしまう人もいるかもしれませんが、そればかりではありません。
例えば、自動車メーカーであっても、環境に配慮した製品を製造しているか、工場の排水をきちんと処理しているか、汚水を垂れ流しにしていないかなど、どんな企業であっても環境への配慮は重要になります。
最近話題になった、大手コーヒーチェーンなどのプラスチックストロー廃止の動きも、環境に配慮していると言えるでしょう。
環境に配慮していない企業は応援されないだけでなく、将来的な発展が期待できないとも判断されます。
Social(社会性)についても同様で、製品やサービスの安全管理や、社内の労務管理、社内での女性登用ばかりではありません。地域社会への貢献や、地元との共存、雇用の創出など、様々な点において、社会との関わりや、働きかけが重視されます。
Governance(企業統治)については、コンプライアンス管理や、情報管理の徹底などが評価のポイントになります。健全に企業経営がされているかどうかは、事業の発展だけでなく、不正などによる暴落のリスクを回避することにも繋がります。
似た概念にSRI(Socially Responsible Investment, 社会的責任投資)という言葉もありますが、こちらはより倫理的な観点での評価が強くなります。
一方、ESGでは、E・S・Gの3つの観点をクリアすることで、様々なリスクを回避し、その企業の「事業面での発展」=「将来的な投資のリターンの向上」も期待します。
つまり、投資の側面でみた場合、SRIをさらに発展させた概念とも捉えることができるのがESG投資です。
ESG投資は、公的年金基金も重要視しており、世界最大の年金基金である「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は2017年に1兆円規模のESG投資を開始しており、今後3兆円まで規模を拡大する予定のようです。
また、アメリカ最大の公的年金基金である、カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)は、2012年時点で全ての投資判断にESGの観点を組み入れることを発表しています。
このように、今後「ESG」という観点はさらに注目を集め、投資において重要なポイントになると考えられます。
SDGsとは
ESG投資に似たキーワードに「SDGs」というものもあります。SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略称であり、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
出展:2030アジェンダ | 国連広報センター
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/
SDGsとは、2030年までに貧困撲滅や、福祉やインフラの充実、環境保護など国際社会に共通する17の課題解決を目標にしたものです。
国連に加盟する193ヶ国全てが合意しており、まさに地球一丸となって取り組んでいる目標と言えるでしょう。ここで挙げられている17の目標(Goals)は以下の通りです。
- 貧困をなくす
- 飢餓をゼロ
- 全ての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等の実現
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤を作る
- 人や国の不平等をなくす
- 住み続けられるまちづくり
- つくる責任、つかう責任
- 気象変動に具体的な対策
- 海の豊かさを守る
- 陸の豊かさを守る
- 平和と公正をすべてての人に
- パートナーシップで目標を達成する
いずれの目標も、当たり前のことであり、世界中で取り組むべきことであるのは明らかでしょう。
このSDGsをきちんと意識できているかという点が、ESG投資の、特にEnvironment(環境)やSocial(社会性)を評価するときに重視されます。
単に「環境への配慮」といっても評価することは難しいですが、「SDGsへの貢献」として整理することで、その企業のESGの度合い(レベル)を測ることができるのです。
つまり、投資先の企業のSDGsへの貢献や、その取り組みが、ESG投資においては重要になるのです。
投資先選びの一つの基準に
このように企業の評価のポイントはビジネスモデルや収益性ばかりではありません。
その企業が長期に渡って持続的に発展できるか、社会的に意義・価値があるのかも重要なポイントです。
そもそもESG投資とは、欧米の投資家が、財務面だけでなく、企業の定性的な側面を評価することで、長期にわたってより安定的な収益を求めたことが始まりです。
ESGレベルの高い企業に投資することは、巡り巡ってSDGsに貢献するだけでなく、投資家目線でも、より長いスパンで確実なリターンが期待できます。
ESG投資は、慈善活動ではなく、あくまでも「投資」における新しい1つの評価基準です。
投資先の企業や、出資するファンドを選ぶ際には、パフォーマンスや財務面ばかりでなく、こういった社会的な価値や意義についても判断の指標に加えてみるとよいかもしれません。