近年は非常に低金利で、銀行に預金していても増えない時代です。
預金がある程度の金額になり、資産運用を考える人も少なくないでしょう。
そこで今回は、初心者でも始めやすく、よく話題に挙がるFXについて取り上げたいと思います。
「FXで○億円儲ける方法!!」のような書籍は人気がありますし、テレビやインターネットでもトレーダの方の出演は数多いですね。
誰でも始めやすく、また儲かる方法として広く知られているFXですが、その実態はどうなのでしょうか?
今回は、1,000万円を運用する方法として適切なのかどうか考えていきたいと思います。
FXとは何か
まず最初に、「FXとは何か?」大前提の話からしていきたいと思います。
FXとは「Foreign Exchange」の略で、「外国為替証拠金取引」のことを指します。
日本円を外国の通貨に変える取引を行い、為替レートが上手く動けば収益をあげることができます。
例えば、1,000万円で米ドルを買ったとします。
この時の為替レートが1ドル100円だったとすると、1,000万円=10万ドルになります。
その後、為替レートが1ドル100円→110円になったタイミングを見計らって米ドルを日本円に戻します。
すると10万ドル=1,100万円となるのです。
この取引を通じて、元手の1,000万円は1,100万円に増えており、100万円の収益が出たことになります。このようにFXでは、為替レートの動きによって儲かったり損したりします。
米ドルの「買い」から取引を始めれば、「円安」になると利益が出ます。
先程の例の為替レートの変化「1ドル=100円 →1ドル=110円」はまさに円安の例と言えます。
差金決済とは
また、FXは米ドル「売り」から取引を始めることもできます。
先に米ドルを売って、後で買い戻すのです。
1ドル100円の時に、10万ドルを売って1,000万円を得たとします。そして、為替レートが1ドル90円になった時に買い戻します。
すると、10万ドルを買い戻すのに必要な金額は900万円で済みますので、
1000万円 – 900万円=100万円
が利益となるのです。
FXでは実際に米ドルがなくても、こういった取引を簡単に行う事が出来ます。
これは、差金決済と呼ばれる取引手法が採用されているためです。
差金決済とは、現物を伴わずに売買の差額だけをやり取りする手法です。
上記の例では、1万ドルの売りの時点で1,000万円が入るわけではなく、10万ドルを買い戻す反対売買が終了した際の差額、100万円が利益として受け取れるわけです。
差金決済は、取引の手間を省き売買をスムーズにするため、取引のしやすさと言う点では格段のメリットがあります。
ただし、制限が全くないという訳ではありません。
取引をするには、「証拠金」を差し入れる必要があり、その証拠金の額に応じて、取引できる金額が制限されます。
これは、「レバレッジ」と呼ばれており、この制度によって、少ない資金でも大きな金額の取引ができるのがFXのメリットです。
FXのレバレッジの最大値である25倍のレバレッジをかければ、100万円分の取引をするための証拠金が4万円で済むことになります。
このレバレッジという制度を活用することで、FXでは大儲けをすることができます。
仮に40万円の証拠金を元に、25倍のレバレッジをかけて、1,000万円分の取引をしたとしましょう。1,000万円→1,100万円(+100万円=+10%)にできたとすると、なんと40万円の資金を元手に100万円(=250%)の利益を得流ことになります。
このように、レバレッジは、資金を大きくすることで、利回りも大きくすることができるのです。
そのため、「FXで大金持ちに」という夢を見る人が後を絶ちません。
元々100倍を超えるレバレッジをかけることができたFXですが、大きく掛けすぎて資産を失う(時に破産してしまう)投資家が数多く出たため、2010年に50倍、2011年に25倍と規制が進みました。
規制の強化は投資家を守るための金融庁の政策だったと言えます。
そして、この傾向は続いており、早ければ2018年から最大10倍に規制される可能性もあります。
規制の強化が進んでいる事からも、高すぎるレバレッジは億万長者よりも資産を失う人を数多く生んでしまっていると捉えることもできます。
スプレッドとは
また当然ですが、FXの取引をするには手数料が必要になります。
手数料には「売買手数料」と「スプレッド」とがあります。
売買手数料は、文字通り売買(取引)の際にかかる費用ですが、こちらは無料のところが多いです。
では、スプレッドとはいったい何でしょうか?
実は為替レートは、買う時のレートと売る時のレートが違います。
例えば、スプレッドが1銭(0.01円)の場合、
1ドル100.00~100.01円のように1銭(0.01円)の幅を持ち、米ドル買い時は100.01円、米ドル売りの時は100.00円となります。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、要はこの1銭は、FX会社のとる手数料です。
つまり、このスプレッドの幅が小さければFX会社の手数料が小さいということになります。
この「スプレッド」は会社によって異なります。また、取引通貨や単位によっても異なります。
FXを始める前に、
「自分は何の通貨で取引がしたいのか?」
「どこの会社の手数料がいくらでどこで始めるべきなのか?」
検討する必要があるでしょう。
FXで利益を上げる2つの戦略とは
FXの基本的な仕組みはこれまで見てきた通りです。
それでは、FXで利益を上げるにはどのようにしたらいいのでしょうか?
FXでの運用には、大きく2つの戦略があります。
戦略1:スワップポイントを狙う
1つ目の方法はスワップポイントを狙う方法です。
また横文字が出てきましたが、スワップポイントとは日本円と外国通貨の金利差の事です。
日本円は金利が低いので、外国通貨を買って保有しておく状態にすると金利差分のポイントを受け取ることができます。
有名な通貨だと南アフリカランドがありますが、南アフリカランドの政策金利は6.75%です。
一方、日本円の政策金利は0.10%です。
つまり日本円で100万円を運用しても、年間で1,000円しか手に入れることができませんが、南アフリカランドであれば、67,500円を受け取ることができます。
※実際には、1南アフリカランド≒8円なので、12.5万南アフリカランドを保有し、年間で、8,437.5南アフリカランドを受け取ることになります。
この「金利差(67,500-1,000=66,500円)」を利益としてが受け取ることができるのです。
さらに、レバレッジを掛ければこれを10倍20倍に増やすことができます。
仮に10倍のレバレッジをかければ、100万円を元手に年間で66万円以上の利益を手にすることができるのです。
ただし、注意しなければならないのは南アフリカランドといった新興国の通貨は為替レートが非常に大きく動きやすいという点です。
先ほど、1南アフリカランドが約8円前提のもと計算をしましたが、仮に、これが4~5円まで円高に振れると一気に利益が吹き飛んでしまう可能性もあります。
仮にスワップポイントだけを狙っていたとしても、常に為替リスクに晒されていることを肝に命じておかなければいけません。
戦略2:キャピタルゲインを狙う
2つ目の戦略はキャピタルゲインを狙う方法です。
これは、為替レートの変動で上手く収益をあげる方法です。
対米ドルで円安になると思ったら、米ドルを買えば良いですし、円高になると思ったら米ドルを売ります(先述の1ドル100円から110円まで円安に振れたケースなどは代表的な例でしょう)。
これは言葉で書くと簡単ですが、実践して利益を出し続けるのはとてつもなく難しいことです。
為替には政治や経済など非常に多くの要素が影響を与えており、予測は非常に難しく、はっきり言って経済の専門家でも為替の予想は不可能と言われています。
素人が為替を読み切ってFXで運用するのは、無謀と言わざるを得ません。
テクニカル分析の是非について
一方で、世の中にはFXの取引をしている人は数多くいます。
彼らは何を根拠に売買しているのでしょうか?
メジャーな手法として、テクニカル分析というものがあります。
これは、チャートの”形”を分析して為替レートの動きを予測するというものです。
テクニカル分析関連の書籍は数多く出版されており、また飛ぶように売れているため、思わず手を伸ばしてしまいたくなってしまう人もいるかもしれませんが、金融に携わる人間でテクニカル分析を信頼している人はほとんどいません。
テクニカル分析で語られるのほとんどの理論については、合理的な根拠がなく、もはや信仰に近いものも少なくありません。
実際、テクニカル分析でで成果をあげているとされる人たちの多くは、独学(という名の独自の理論)の方ばかりであり、きちんとした金融の経験がある人は見たことがありません。
何かすがりたくなる気持ちは分かりますが、きちんとした根拠がないものには手を出さない方が無難でしょう。
まとめ
結論として、1,000万円の運用としてFXは適さないと考えられるでしょう。
なぜなら、FXでの売買は合理的な理由による売買が難しく運の要素が大きくなってしまうからです。
例えば、「50万円を1,000万円まで増やすんだ!」というような夢を持った「投機」をするならFXは向いているかもしれません。
20倍に増やすというのはレバレッジをかけないと中々達成し辛いですからね。
しかし、1,000万円というまとまった資金があれば他にも運用の方法は様々あります。
また、1,000万円というまとまった金額であれば、不必要なリスクをとって高い利回りを狙いすぎず、資産を守りながら堅実な運用をする方が懸命でしょう。
50歳からの資産運用では、様々な資産運用の方法を紹介しています。