ノーロード投信とは
投資信託を選ぼうと思った時に「ノーロード」という言葉を耳にすることがあります。
低コストの銘柄としてオススメされることも少なくありませんが、一体どんなものなのでしょうか?
今回はこのノーロード投信について考えていきたいと思います。
ノーロードとは
ノーロードとは、購入時の販売手数料がかからない投資信託のことです。
日本の投資信託は平均して3.20%の販売手数料がかかります。
参照:金融庁説明資料
https://www.fsa.go.jp/singi/kakei/siryou/20170330/03.pdf
つまり、買った途端に資産が3%減ることになります。
販売手数料がかかる(ノーロードではない)投資信託は、3%利益が出なければ損をすることになります。
「とりあえず買ってみたけど、利益が出なそうだから手放す」ということをしようと思うと、資産はどんどん減っていくことになります。
この最初のハードルである販売手数料がゼロなのが「ノーロード」です。
ハードルが低く、注目を集めるのもわかります。
投資信託の3種類の手数料
ノーロードの投資信託は販売手数料がかからないというものでしたが、そもそも投資信託にかかる手数料はこれだけではありません。
投資信託には、「販売手数料」の他にも、「信託報酬」「信託財産留保額」という3種類の手数料がかかります。
販売手数料は先述の通り、投資信託の購入時に支払う手数料のことです。
次の「信託報酬」は、運用管理費用とも呼ばれ、投資信託を保有している限り継続的にかかり続けます。
年間で0.2~2%程度(平均で1.5%/年)かかるため、年間のパフォーマンスがこれを上回らないと永遠に資産を増やす(利益を得る)ことができません。
そういった点でも、最も重要な手数料が信託報酬です。
最後の「信託財産留保額」は解約手数料とも呼ばれ、投資信託の解約時(売却時)に支払う手数料です。
販売額に応じて、銀行や証券会社といった金融機関に支払います。
平均で0.3%前後となっており、他の2つの手数料と比べるとそこまで大きくありません。
投資信託の3つの手数料
・販売手数料:購入時に1度きり(平均3.2%)
・信託報酬(運用管理費用):継続的に支払い続ける(平均1.5%/年)
・信託財産留保額(解約手数料):解約時に一度きり(平均0.3%)
ノーロドの罠
このように投資信託には様々な手数料がかかります。
その中でも特に割合の高い販売手数料がゼロになるというノーロード型の商品に人気が集中するのは当然とも考えられます。
ですが、投資信託をノーロードで販売できるということはそれなりの理由があります。
ついつい飛びついてしまいたくなるノーロード型の投資信託に隠された裏事情をここでは紐解いていきたいと思います。
なぜノーロードは人気なのか
そもそも何故ノーロードの投資信託は人気なのでしょうか?
それは、ひとえに「手数料が安いから」ということに他なりません。
確かに手数料は安いに越したことがないようにも感じますが、本当にそうでしょうか?
手数料が安いということは、運用に手間暇がかけられていないかもしれませんし、高いパフォーマンスが期待できないかもしれません。
そもそも投資戦略やポートフォリオの質が悪いかもしれません。
投資信託を評価する際には、手数料だけでなく、投資のクオリティやパフォーマンスも考慮しなければいけません。
むしろ手数料は運用の本質から外れており、第一に考えるポイントではありません。
「他の投資信託と比較しやすい」「目に見えてわかりやすい」という安易な理由で手数料を基準に投資信託を選んではいけないのです。
ノーロードの弊害
そもそもノーロードに代表されるような手数料の安い投資信託の運用の質が下がってしまうのには理由があります。
以下の2つの投資信託を比較して試算してみましょう。
A:純資産総額:10億円、販売手数料:3.2%、信託報酬:1.5%
B:純資産総額:10億円、販売手数料:0(ノーロード)、信託報酬:1.5%
Aの投資信託の場合、金融機関が得る報酬は、販売手数料と信託報酬の2種類があります。
※信託財産留保額(解約手数料)は比率が低いためここでは試算から割愛します。
投資信託の平均的な保有期間は2~3年なので、販売手数料は
3.2% ÷ 3年 = 約1%/年 と割り戻すことができます。
したがって、Aの投資信託から
10億円 × 1%(販売手数料) + 10億円 × 1.5%(信託報酬) = 2,500万円
が金融機関に毎年支払われています。
一方、Bの投資信託は、販売手数料がかからないノーロード型のため、金融機関の収益は年間で
10億円 × 1.5%(信託報酬) = 1,500万円 のみとなります。
この2,500万円, 1,500万円を
・販売会社(銀行や証券会社)
・運用会社(委託会社社)
・信託会社(信託銀行)
と3つの金融機関で配分することになります。
仮に運用会社の取り分を全体の半分とすると、A:1,250万円 / B:750万円が運用会社の取り分になります。
ここからトレーダーの給料が支払われるわけですが、一般的に会社員を1人雇うと給与と同じかそれ以上の経費がかかると言われています。
したがって、投資信託Aは年収約600万円のトレーダーに、投資信託B(ノーロード)は年収約350万円のトレーダーに運用をお願いしているとも試算できるわけです。
年収350万円というと、大手の金融機関であれば新卒社員レベルです。つまり、ノーロード型の投資信託は新卒社員と変わらないレベルのトレーダー運用しているとも考えられるのです(少し乱暴な計算ではありますが…)
そんなレベルのトレーダーに信託報酬を払っていると考えると、運用の質もたかが知れている気がします。
手数料が安いということは、これほどまでに投資の質が下がる可能性を含んでいます。
ちなみに、投資信託Aを運用しているトレーダーも年収600万円程度と考えると、こちらも大した実力は期待できないかもしれません。
手数料の安い投資信託は、いずれにせよパフォーマンスが期待できません。
ノーロードよりも重要なポイント
ノーロードという「わかりやすく」「他との比較も明確な基準」があると、ついつい魅力的に感じてしまいます。
ですが、その分運用の質が下がってしまう可能性があることを忘れないようにしましょう。
低コストには低コストなりの弊害があります。十分注意しなければいけません。
当然のことながら、資産運用をするにあたって最も重要なのはリターンです。
手数料などのコストは、収益性を左右しますが、それは単に投資の利益から引かれるという直接的なものだけでなく、そもそもの投資の質を左右するということも忘れてはいけません。
例えば、ヘッジファンドなどで、信託報酬がパフォーマンスの50%などというケースもあります。
ですが、仮に運用のパフォーマンスが年20%なのであれば、年10%ものリターンを享受できるわけです。
信託報酬が0.5%で年3%のパフォーマンスの投資信託とどちらが優れているかは一目瞭然かと思います。
ちなみにヘッジファンドが高い信託報酬を設定しているのは、高いパフォーマンスを出す自信の現れとも考えられます。
重要なのは最終的な収益性です。
表面的な情報や、目先のコストなどに振り回されることなく、投資の本質をきちんと見極めるようにしましょう。