意外と多い投資信託での大損
投資が身近になり、投資信託で運用する人も増えてきました。
銀行や証券会社で勧められることも多く、また周りにも投資信託で運用している人がたくさんいるためか、ついつい軽い気持ちで簡単に手を出してしまう人がいます。
しかし、投資信託は油断すると大損をする可能性があるのです。
数万前後ならいざ知らず、数十万〜数百万円、中には1,000万円を超えるような損失を被ってしまっている方もいらっしゃるようです。
参考:大手銀行に母親が騙され投資信託購入で2000万円の損失 – セミリタイア資金3000万を目指すブログ
http://semiritaia.net/toshin/
参考:投資信託で1,000万円近く損しました。 – ここ7年程、投資信託をや… – Yahoo!知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13127916063
参考:夫が投資信託で3か月で600万円の損失|投資信託の虎
http://investmenttrust.biz/q25.html
また、以下のサイトでは投資信託で損をした人たちのエピソードが赤裸々にまとめられています。
➡︎ みんなの大損告白|株・FX・投資信託での大損告白 http://fukumizon79.com/
このように一見お手軽に見えて、たくさんの人が大きな損失を被っているのが投資信託です。
そこで今回は「なぜ投資信託で運用しているのに大損してしまうのか?」という4つの理由と、それを回避するための方法について解説していきます。
大損してしまう4つの理由
そもそも投資信託はリスクのある金融商品です。
元本保証ではありませんし、値上がりする可能性もあれば値下がりする可能性、すなわち損をする可能性があります。
ですが、投資信託で運用していても、きちんと利益を出す人もいれば、大損してしまう人もいます。
投資信託で運用していて損をしてしまうには以下の4つの理由があります。
1. 目論見書をきちんと読めていない
2. リバランスができていない
3. 分配金のある銘柄を選んでいる
4. 損切りができていない
順を追って確認していきましょう。
理由1. 目論見書をきちんと読めていない
投資信託には「目論見書」が存在します。
目論見書には、ファンドの目的や、投資先(対象)、運用方法(インデックス or アクティブ)、手数料、過去の運用実績、分配についてなど、投資信託の根幹に関わることが記載されています。
投資信託説明書(交付目論見書)は、投資信託購入時に必ず投資家に渡されます。
しかし、この投資信託そのものとも言える目論見書をきちんと読んでいない人は少なくありません。
自分が何に投資しているのかきちんと理解できていないままに、資産を費やしてしまっているのです。
たしかに投資信託は身近になってきており、誰でも簡単に始めることができます。
ですが、だからと言って運用の際に手を抜いていいわけではありません。銀行や証券会社が勧めてくるものを安易に購入してはいけないのです。
自分がどんなものに投資しているのか把握できていなければ、
・どの程度のリスクがあるのか
・どんな時に値下がりする可能性があるのか
・どんなものに影響を受けるのか
を理解することもできません。
資産運用の大基本に「自分が理解できるものに投資する」というものがあります。
もし自分の投資対象をきちんと理解できていないのであれば、それは投資ではなく投機です。
投資信託で運用する際は、目論見書をきちんとよく読み、それがどんなものなのかきちんと理解しましょう。
全てはそこからスタートします。
理由2.リバランスができていない
資産運用をしている上で、必ず耳にする言葉の一つにポートフォリオがあります。
ポートフォリオとは資産の組み合わせやその比率のことであり、「資産運用の目的」や「どの程度のリターンを狙うのか」、「どの程度のリスクを許容するのか」、「どんな戦略をもって(何が値上がりすると予想して)運用するのか」など、それぞれの投資の意図に応じてバランスが決定されます。
投資を始めるときには誰もがきちんと考えるでしょうし、ネット等で調べれば、どんなバランスにすればよいのか、具体的な配分の例を知ることもできます。
銀行や証券会社に相談すればアドバイスもくれるでしょう。
ほとんどの人は投資をスタートするときにはこのポートフォリオをきちんと考え、検討しますが、運用を続けていくうちに意識が希薄になってしまうものです。
「はじめにきちんと考えれているから大丈夫」と高を括っているのかもしれませんが、ポートフォリオは常に見直し、リバランスをしなければなりません。
もちろん「より大きなリターンを」「よりリスクを抑えて確実に」という、投資の目的やゴールの再設定に伴うリバランスもあります。
そうなってくると「自分は投資の目的・ゴールが変わっていないから関係ない」と考えてしまうかもしれませんが、実は自身で設定している目標が変わっていなくてもリバランスはしなければいけません。
ポートフォリオのバランスは日々変化しているのです。
例えば、100万円の資金を元手に、輸出銘柄50万円(50%)・輸入銘柄50万円(50%)のバランスで運用していたとしましょう。
時間が経って、輸出銘柄が60万円に値上がり、輸入銘柄が40万円に値下がりすると、ポートフォリオのバランスは50:50から60:40に変化してしまいます。
元のポートフォリオに戻すためには、輸出銘柄を売って輸入銘柄を買い戻すなどして資産を動かさなければいけません。
仮にこのまま放置をすると輸出銘柄の割合が高くなった分、円安に強い反面、円高に弱いバランスになってしまっています。
このように資産は常に動き続け、ポートフォリオは日々変化します。
常にご自身のポートフォリオの状態を把握し適宜手直し(リバランス)しなければなりません。
理由3. 分配金のある銘柄を選んでいる
大損をしてしまっている人に共通する特徴として「分配金」のある銘柄を選んでしまっているという点があります。
分配金とは決算時に投資家に支払われるものであり、投資家は毎月お金を受け取ることができます。
「一定のお金が入ってくる」というわかりやすいメリットは、特に投資の初心者には魅力的に感じられるでしょう。
ただし、この分配金は投資信託の利益を保証するものではありませんし、ましてや投資家の利益に繋がるものでもありません。
そもそも分配金がどのように支払われるのか考えてみましょう。
分配金は、投資信託の資産の中から支払われます。
例えば、基準価格が1,500円の投資信託の場合、50円の分配金が支払われると、投資信託の純資産は減り基準価格は1,450円に下がります。
このように分配金は投資信託そのものを削って捻出されているのです。
仮に元々の基準価格が1,300円であれば、50円を受け取りつつ、基準価格も1,450円に値上がりしているためまだ悪くはありません(このように利益の中から支払われる分配金を「普通分配金」と言います)。
しかし、基準価格が常に上昇するとは限りません。
元々1,600円だった基準価格が1,500円に値下がりしているのにも関わらず、さらに50円が引かれている場合もあるのです(このように投資信託の元本を削って支払われる分配金を「特別分配金」と言います)
投資信託をきちんと理解していない人の中に、目先の分配金にばかり意識が向いてしまい、投資信託の基準価格が目減りしていることに気づけていない人がいます。
分配金を5万円受け取っていても、100万円だった純資産が90万円に減っていては元も子もありません。
そもそも分配金という仕組みは、投資信託を強制的に部分解約させられているようなものであり、投資的なメリットもなければ、むしろ機会を失っているとも考えられます。
投資のキモの1つに複利があります。投資で得た利益をそのまま運用に乗せ続けることで雪だるま式に利益を得ることができます。
分配金というシステムは、この複利の旨味を失っているのです。
一見すると、手元にお小遣いが入ってきて嬉しいような分配金ですが、その仕組みをきちんと理解しなければ大損につながってしまいます。
理由4. 損切りができていない
投資の格言の一つに「投資は入口ではなく出口」というものがあります。
どんなものに投資するか(何を買うか)も重要ですが、それ以上にどのタイミングで売却(利確/損切り)するかが重要なのです。
投資をしていれば「必ず」損をする場面に直面します。
どんなに優れた投資家であっても、投資している全銘柄が利益に繋がることはありませんし、価格が下がる時もあります。
値上がりする銘柄に投資する確率を高くすることも大切ですが、仮に損をする銘柄に投資していた場合、いち早く損切りをして被害を最小限にすることが重要になります。
保有している投資信託が値下がりしているのにも関わらず、それを認められず、根拠もない「戻るはず」という願望にかまけて、ダラダラとしているとどんどんと損失は膨れ上がってしまいます。
例えば、有名なリーマンショックの際に、日経225は最大で53.2%もの暴落をしています。
出典:投資信託で大損に関する事実と、大損してしまった時の対処法3つ、回避法6つ
https://fudousan-kyokasho.com/mutualfund-heavyloss-14329#i
たくさんの人が大きな損失を被ったリーマンショックですが、よくよく考えてみると53.2%の値下がりをするまでの間には、約2年もの開きがあります。
つまり、リーマンショックの直後、1~2ヶ月程度のうちに損切りをして入れば、これほどのダメージを受けることはなかったのです。
ただし、損切りが重要な一方で、慌てた行動は慎まなければいけません。
最近のエピソードだと、2016年のアメリカ大統領選挙(ヒラリーvsトランプ)の際に、日経平均株価が1日で6%近くも暴落しています。
出典:投資信託で大損したらいくら損失を抱えるか – 東北投信
https://blog.tacos-heaven.xyz/2017/07/13-11/
1日で6%もの下落は、暴落とも呼べ、慌てて売りたくなってしまいますが、チャートからもわかる通り、翌日には値を戻しています。
つまり、慌てて損切り(パニック売り)した人たちだけが損をしたのです。
このようにチャートはどのように動くのかわかりません。
「どこまで値下がりするのか」「いつ値が戻るのか」をよく考えた上で、損切りのタイミングを判断する必要があります。
投資信託で運用する際に気をつけたいこと
投資信託で運用する際には、大損を回避するためにも、以下の点に気をつけなければなりません。
・自分が投資しているものをきちんと理解すること
・随時リバランスを行い、適切なポートフォリオを維持すること
・分配金に目がくらむこともなく、仕組みや資産を正しく把握すること
・損切りや利確のタイミングを適切に見極めること
ですが、仮にこれら全てを実践したとしても投資で成功する(利益を得られる)とは限りません。
そもそも日本の投資信託は質が低く、投資に適していないのです。
金融庁の基調講演「日本の資産運用業界への期待」では以下のように語られました。
日本で売られている公募株式投信は 5406 本ありますが、そのうちインデックス型株式 投信は 381 本です。これから、毎月分配型の投信、レバレッジのかかった投信、信託期間 が短く長期投資を前提としていない投信を除き、ノーロードで信託報酬が一定率以下のも のに限ると、積立 NISA の対象として残ったものは 50 本弱でした。
10 年以上存 続している日本の株式アクティブ型投信281本の過去10年間の平均リターンは信託報酬 控除後で年率 1.4%であり、全体の約三分の一が信託報酬控除後のリターンがマイナス となっていました。ちなみに、この 10 年間で日経平均株価は年率約3%上昇しており、イ ンデックス投信が一般的にアクティブ型投信に比べリターンが高いとのマルキールとエリ スの主張は、日本株投信についても当てはまるように思えます。
この結果、積立 NISA の対象となりうる投信は、インデックス投信とアクティブ型投信あ わせて約 50 本と、公募株式投信 5406 本の1%以下となりました。
引用:「日本の資産運用業界への期待」 日本証券アナリスト協会 第8回国際セミナー 「資産運用ビジネスの新しい動きとそれに向けた戦略」における 森金融庁長官基調講演
https://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/20170407/01.pdf
まとめると以下のようになります。
・アクティブ投信の過去10年で平均年1.4%(日経平均は3%上昇)
・金融庁として投資に値するもの(積立NISAの対象)は5,406本中50本で1%未満
そもそも日本の投資信託市場では、実にその90%以上の銘柄が将来的に値下がりするとの話もあります。
このように劣悪な商品が乱立する投資信託で運用すること自体が間違っているのかもしれません。
資産運用をしようと思った時に、投資信託は数ある投資の手段の一つにすぎません。
「人気だから」
「簡単だから」
「銀行や証券会社で勧められたから」
などという理由にもなっていないような理由で、投資信託を選択してはいけないのです。
人生において重要な資産運用だからこそ、たくさんの可能性をひとつひとつ精査し、是非ご自身の判断で適切な運用方法を検討してみてください。