農家の方々なら重々ご存知のことでしょうが、農業がここ数十年衰退の一途を辿っています。
少子高齢化やTPP問題といった、時代背景も然りですが、それだけではない日本農家が抱える根本的な問題はどこにあるのでしょうか。
ここでは大きく3つの課題を考えていきたいと思います。
農家が抱える3つの課題
課題① 農業人口の現象と高齢化
まず最初に考えられる農家の課題として、農業人口の減少が挙げられます。
出典:(2)食料消費と食料生産の動向 イ 食料生産の動向:農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h18_h/trend/1/t1_1_1_05.html
農林水産省が5年に一度行う調査によると、農業人口はここ10年で100万人以上減少しています。また、1965年には1,151万人もいた農業人口は、この50年間で1/5にまで減少してしまっています。
さらに、平均年齢も上昇してます。
同調査によると、65歳以上が64%を占める一方で、39歳以下が全体の7%しかおらず、農業においては、日本全体以上に少子高齢化の波が押し寄せています。
これは、農家の後継者が不足していることも意味しており、このままでは今後さらに減少の一途をたどることになるのはほぼ間違いないでしょう。
政府・自治体がこれに歯止めをかけるために、様々な支援策を検討しているものの、そもそも農業はどんな作物であっても莫大な土地とお金を必要し、新規に起業するハードルが非常に高く、問題の解決は簡単ではありません。
課題② 食料自給率の低下
もう一つの大きな課題が、日本の食料自給率の低さです。
今と昔の日本の食糧自給率(供給熱量ベース)を比較すると、昭和40年には73%であったのに対し、平成29年の現在では40%まで減少しています。
出典:(3)食料自給率の向上と食料供給力の強化:農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h18_h/trend/1/t1_1_1_06.html
また、この「食料自給率40%」という数字は主要先進国の中でも最低の水準で、特に、ここまで顕著な右肩”下がり”を見せているのは、主に日本だけであることが以下のグラフからもわかります。
出典:(3)食料自給率の向上と食料供給力の強化:農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h18_h/trend/1/t1_1_1_06.html
これは、日本の食料自給率が低下することは、日本の農家全体の収入が減少することにつながります。つまり、このまま食料自給率が低下し続けることは、農業全体が衰退することを意味しています。
課題③ 固定資産税の増加
ここにきて、さらに農家に追い討ちをかけるように、税制度が改正されようとしています。
政府は平成28年度の税制改正として、遊休農地に対する固定資産税の増加を検討し始めました。
「固定資産税」は、地方自治体(市や町など)が定めた評価基準に基づいて「固定資産税評価額」を計算し、その金額に税率(1.4%程度)を乗じて算出します。
建物が建てられる「宅地」などについてこの固定資産税評価額は、「正常売買価額」と呼ばれるものになるのに対して、「農地」についてはこの正常売買価額から45%相当を割り引いたものが固定資産税評価額、すなわち固定資産税の基準となっていました。
しかし、今回の改正によって、「使ってない農地は宅地としてみなす」という新しい基準が追加されます。
つまり、今まで「農地」として45%相当減額していた土地の一部が「宅地」として扱われるようになり、 これまでと比較して約1.8倍も固定資産税が上がることになるのです。
今まで農家が受けていた税金面での優遇も、遊休農地がであれば受けられなくなってしまいます。
今、農家に必要なこと
これまで述べたように日本の農業界は向かい風にさらされています。
今までは安定した収入を得ていた農家の方でさえ、高齢化が進み、また、食料自給率も下がり続けてしまえば今後どうなるかはわかりません。
それに加えて、農家は天候や災害にも大きく左右されます。
全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)と東京海上日動火災保険が共同開発した「農業保険」などもありますが、こういった保険だけでこの向かい風を打破できるかというと不安が残ります。
一方で、農家の方々は、景気の良いタイミングにまとまった収入を得られるといった特徴もあります。
季節や、その年の天候、作物の状態などによっては、一般家庭の年収に近い金額を、数ヶ月のうちに稼ぎ出すことも珍しい話ではありません。
収入が不安定になるリスクは、まとまった収入が一度に入ってくるかもしれないというプラスの側面も持っています。
そのため、農家の方こそ現在の資産を将来に向けて運用していくことが必要になります。
資産運用においては、「まとまった資金」があることは非常に大きなメリットになります。
せっかく得た収入を、次の収入までただ減らす(切り崩していく)だけではもったいありません。有効に活用するためにも、農家こそ資産運用が重要なのです。
農家の資産運用に株や不動産がNGな理由
一口に「資産運用」と言っても株式、不動産、投資信託など様々なものがあります。
これから資産運用を始めようという農家の方々は、どんな手法で投資を始めればよいのでしょうか?
結論から言えば、上で挙げた3つの投資(株、不動産、投信)は、いずれもを農家の方の運用としてはおすすめできません。その理由を以下に順を追って説明していきます。
株式投資がおすすめできない理由
株式投資で利益を上げるためには、株式市場や会社の経営・財務等に関する正しい知識とノウハウが必要です。
また、日々目まぐるしく変わるチャートや四季報のような細かいデータと睨み合いながら運用していくことは、並大抵の労力ではありません。
特別な経験もなく、日中は農業に忙しい農家の方が実践するのは非常に難しいでしょう。
不動産投資がおすすめできない理由
次に、不動産投資ですが、似たようなものとして農家の人向けに「農地中間管理事業」というものがあります。
これは、空いている農地を機構に預け、機構が事業拡大したい農家に貸し出すというものです。
しかし、地区にもよりますが、10a(1,000平方メートル)あたり1万円前後と、土地の広さの割にほとんど利益を得ることができません。
また、自身の土地にマンション等を建てたり、近くのマンションを購入し投資する方法もありますが、農地になっているような土地柄の場合、安定して入居者が入る見込みも低いと考えられます。
自身の農地と離れた、都心では管理するのが大変になりますので、いずれにせよ不動産投資も難しいと言わざるを得ません。
投資信託がおすすめできない理由
では、運用の知識がそれほどなくても、自分で運用せずに代わりに運用してもらえるというイメージのある「投資信託」はどうでしょうか。
投資信託は、資産を増やす方法としては不利だとされています。
投資信託で、日経平均や東証株価指数などの「インデックス(指標)」を上回る実績を上げているものは非常に少なく、実際ほとんどの投資信託は、インデックスを目標として運用されています。
つまり、自分でインデックスを買って運用する程度の利益しか得られないということです。
また、投資信託を購入する際には、販売会社に販売手数料も支払います。
つまり、大した利益を得られるわけでもないのに、手数料を払う必要があるものが投資信託なのです。
これが、おすすめできるわけもありません。
農家におすすめできる運用方法とは
では、具体的にどのような運用の方法が農家の方におすすめできるのでしょうか。
ここで、おすすめしたいのはヘッジファンドでの運用です。
ヘッジファンドは、投資のプロ(ファンドマネジャ)が投資家から募った資金をまとめて運用し、利益を出資者に還元するという、資産運用の代行サービスです。
一見すると、投資信託と似ているように感じるかもしれませんが、その実は大きく異なっています。
まず、手数料ですが、投資信託が「証券会社」や「運用期間」など多重に(目には見えない)コストが発生しているのに対し、ヘッジファンドは投資家とファンドの直接の契約のため、中抜きされる費用がありません。
そのため総合的なコストは、投資信託と比較しても小さくなる傾向があります。
投資信託では、販売手数料や信託報酬で利益を得るため、極端な話、運用によって利益を上げる必要がありません(これこそが投資信託が粗悪である最大の要因の一つでもあります)。
一方で、ヘッジファンドは、運用成果に応じて会社の収益が決定するため、結果(パフォーマンス)こそが最重要となります。
したがって、運用成績の面においても、一般的にはヘッジファンドの方がはるかに優れている傾向があり、年10~20%程度が期待できると言われています。
ヘッジファンドでの運用には、最低出資金が高いというハードルがあります。。
投資信託が数万円から、誰でも簡単に始められるのに対して、一般的なファンドでは数百万円〜1,000万円と非常に高い最低出資金が設定されています。
しかし、これもまとまった収入のある農家の方であれば、上手く調整することで乗り越えることができるでしょう。
農業で安定した収入を得られるように本業に力を入れながらも、向かい風が多い農業界において将来の有事に備えておくことは非常に重要です。